「イエスタデイ」の感想

プライムビデオの二本目はイエスタデイです。一言で感想をいうなら、本作はなろう小説の映画版なのかもしれません。

※個人の感想なのでネタバレも含む可能性があります

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前回スーパー・サイズ・ミーを見たときは、Amazonにログインして真っ先に表示されたおすすめのような位置でしたが、今回も同じように深く考えずに再生してみました。

ロゴといい、タイトルといいビートルズを題材にした映画ではありますが、そこまでクドくは感じませんでした。それどころか、導入部分は売れないミュージシャンが大成していく様をいい具合に描いているなと感心させられました。

私自身はこれまでたくさん映画を観てきたわけではないので、映画をあれこれ言える立場でもありませんが、今作は面白いと思いました。単純にビートルズを題材にしてなにか映画を撮ろうと思ったときに、SNSの拡散やダウンロード配信など現代のエッセンスが多分に詰まっていますね。

この映画のジャンルは一体なんだろうと考えたときに、恋愛が本質なのか、はたまた音楽が本質なのか観る人によって感想は変わると思うのですが、冒頭に書いたなろう小説っぽさについて書いてみようと思います。

そもそも私はなろう小説というものをちゃんと読んだことはなく、ネットの情報だけでしか知らないのでこの考えは間違っているかもしれませんが、なんの才能もない主人公が突如アイディアを手に入れて思うような生活を手にするという部分はまさしくそれなのではないかなと思いました。

もともとビートルズにはあまり詳しくありませんが、かといって一度は耳にしたことがあるような曲だから、もちろんこれがもし本当に世界にビートルズというものが存在せずに天啓を受けて公開したような曲であってもおそらくここまで大ヒットとはいくかはわかりませんが、挿入歌としては良かったなと思いました。少なからず唐突にRock YouとかGangsta's Paradiseが流れたりするよりはマシかなと思いました。もちろんどちらも有名な曲には変わりないのですが。

映画の表現でいいなと思うのは、イギリスの田舎からL.A.に移動するときに主人公のジャックと一緒についてきてくれたロッキーが自転車でロングビーチ?の自転車道路を二人で走っていくシーンが流れたときでした。劇中ではお調子者のように描かれていましたが、同じようにL.A.を訪れたときに仮に同じ場所へ行ったとしてもあれだけ楽しめただろうかと思ってしまいました。

もちろん私もアメリカでしかできない体験もできたので楽しめましたけれども、遊び方を知ってる人がいて、振り回されるのも案外悪くないというか、もっとこういう遊び方ができたんじゃないかなと思ってしまいました。こういうシーンでしっかり絆も深めているから最後の方に見下していたはずの友達というよりは忠実な部下になっていて、エンディングまでちゃっかり同行してるのが面白いですよね。

イギリスの映画ではタイトルが思い出せないのですが、この映画もなかなか個人的にはアタリでしたが、以前もタイトルは思い出せないのですがタイムリープものを扱った映画が大アタリでした。ひょっとしたらイギリスはこういった現代のエッセンスを取り込むのが得意なのかもしれませんね。

その映画の共通点ではありますが、主人公が最大の困難。あるいは人生を決める局面でジョン・レノンっぽい人が出てきて主人公にアドバイスをしてくれました。こういうシーンもありきたりなのかもしれませんが、やっぱりこういう俗世から離れた仙人みたいな人物とのやり取りはいいなぁと感じてしまいました。

映画の中では恋敵みたいなギャビンというキャラがいましたが、ジャックがエリーに自分の気持ちを伝えきれない時に彼女を受け入れる的な立場でしたけれども、やっぱり最後の最後で別のガールフレンドがいるようなシーンがあったのでモテる人は抜け目ないなぁというか、もちろん映画の話なのですがあれだけジャックとの関係にストップをかけ続けていたのにそんな男にはあっさり彼氏にしてしまいましたなんて電話をわざわざかけてくるあたりはちょっとなぁと思うところもありました。最終的には結ばれてますけどね。

作中のエリーというキャラクターをどう捉えるかにもよると思うのですが、最初にエリーから告白を受けるシーンでも唐突だなと思うし、ことあるごとに追っかけてきては揺さぶりをかけてくるあたりは嬉しいという感情よりもどっちなんだろうと思わせられましたね。とはいえ、幼馴染という設定なので事故に遭ったときも常にいてくれたり、ジャックが実はエリーが自分のことを好きだったと確信するシーンもあったりでやきもきさせられました。最終的にはジョン・レノン風のおじさんの後押しで決めましたけれども、私ならたぶん自分に気がないんだろうなぁと思った時点で逆に厄介に思ってしまうので女性の感情というのもよくわからないものです。友達として扱ってほしいと思ったら、実はずっと待っていたみたいな。言われる側としてはやっぱり困りますね。そこでギャビンみたいな人が現実でも勝つわけで。なんとも言えない気持ちです。

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作中で触れておきたいネタとしては、エドというキャラクターがいましたが、Shape of Youが作中で2回流されるまで気づきませんでした。さすがに私でもYouTubeでは聴いたことがある程度の曲ではありましたが、作者の名前なんて知る由もないですし、このMVのようにメガネをしていないので作中のキャラとはまるで正反対でした。しかし調べてみると彼も実はイギリス出身で、舞台のサフォークで育ったということらしいですね。とはいえ、これを初見で電話で感想を伝えてきてくれた時や実際に家に会いに来てくれるときに気づけたらなかなかすごいなと思いますね。それこそ最後まで本人登場ということにすら気が付かなかったかもしれません。

Wikipediaで検索してみて思ったのですが、日本版のポスター画像はもろにアビーロードのオマージュなのですが、英語版のWikipediaは非常に没個性的な感じのポスターでした。これはなにかの戦略なのでしょうか。うーん、せっかくビートルズを題材にして作中でも現実との比較をしているのだからここはもったいないと言わざるを得ませんね。

あとはGoogle検索のネタとして面白かったのはCokeを検索して、麻薬王が出てきてしまったり、ハリーポッターやオアシスなどの単語で検索結果が改変されたあたりはなかなか面白かったですね。もしもコカ・コーラが登場していなかったら、果たしてペプシが当たり前のように天下を取っていたのだろうか。マクドナルドがない世界でバーガーキングが置き換わってどこでも食べられるようになっていたのだろうか。そういったIFストーリーに思いを馳せるというのもなかなか面白い着眼点かもしれません。

VFXもなかなか興味深いところでした。歯が抜けてしまうシーン、ところどころに出てきた満員の会場シーン。特にライブ会場で光源をわっと観客がたくさん出すシーンはなかなか大変そうです。観客が手を上げているシーンは若干違和感はありましたが、なかなかに手間がかかっていそうです。アメリカのトーク番組っぽいスタジオもそれっぽさがありましたね。逆に日本の天気予報っぽいシーンはちょっと違和感。逆にわざとチープにしている部分もあって、特に風船やロゴが出てくる部分は本当にこれ必要なのかとすら思ってしまうほどでした。

まとめです。振り返ってみるとまた今回も3000文字以上書くことができたので、私の中では面白い映画でした。温故知新というか、昔と最近をうまくフュージョンできているような映画ですね。次の作品への期待も自ずと高まりますが、それはまたの機会で。